万延元年遣米使節の歴史と彼らの功績

要旨

1860年(万延元年)、幕府は、タウンゼント・ハリス初代駐日総領事の勧めもあり、1858年に締結した日米修好通商条約の批准書交換のため、新見豊前守正興を正使とする使節団を米国に派遣しました。1860年2月、使節団一行77名は、米国政府の提供した軍艦ポーハタン号にて日本を出発、太平洋を横断して、同年3月にサンフランシスコに到着しました。勝海舟、福沢諭吉、ジョン万次郎等が乗船した咸臨丸も、護衛と遠洋実習を兼ねてサンフランシスコまでポーハタン号に随伴しました。サンフランシスコを出発した遣米使節団一行は、パナマを経由して5月、ワシントンに到着、ブキャナン大統領と謁見し、条約批准書を交換。その後、ボルチモア、フィラデルフィアと最終地のニューヨークを訪問、アフリカを経由して11月9日品川沖に到着し9か月の旅を終えました。鎖国が解かれて6年、彼らの渡米は日本人にとっては初めての公式外交であり、米国にとっても海外から受け入れた初めての外交使節団でした。使節団にとっては外国の文化や文明との本格的な接触の機会となりました。彼らの得た見聞と経験は明治維新の外交と国内政策に多大な影響を与えました。

万延元年遣米使節年表 主なる史実

I 章 使節一行の派遣

  1. 渡米の目的と準備
    1. 迎艦ポーハタン号の渡米決定
    2. 使節一行の構成
    3. 出帆までの準備
  2. 旅行の概況
    1. 太平洋を渡る
    2. ワシントンに於ける日本使節
    3. 大西洋・インド洋の旅

II 章 遣米使節の功績と歴史的役割

  1. 使節帰朝後の情勢
  2. 遣米使節の功績
    1. 海外情勢について見聞をひろめたこと
    2. 遣欧使節への寄与
    3. 貨幣制度に対する寄与
    4. 近代的国防組織への開眼
    5. 科学知識の導入・英学の発達
  3. 遣米使節が米国に及ぼした影響
  4. 日米友好のしるし

編集:万延元年遣米使節子孫の会 長野和郎
遣米使節史料集成 第七巻第二章、「遣米使節の使命と成果」(故金井圓東大名誉教授)の著述を基に編集。